n月刊ラムダノート Vol.3, No.2(2021)
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計算機好きのための技術解説情報誌
- エヌゲッカンラムダノート(不定期刊行)
- 88ページ
- A5判
- 紙書籍は1色刷
- 2021年11月30日 第3巻第2号/通巻6号 発行
n月刊ラムダノートは、nヶ月ごとに刊行される、計算機好きのための技術解説情報誌。コンセプトは「いろんなIT系技術書から1章ずつ選んできた解説記事の集まり」です。今号は3本の記事をお送りします。
目次
#1 ネットワーク自動化の歩き方(土屋太二)
ネットワークのインフラ技術は、ソフトウェアを主に扱うエンジニアには馴染みが薄い分野かもしれない。特に大容量ルータなどの専用ハードウェアを扱うネットワークエンジニアの仕事は、クラウド上で扱われることが増えたサーバーやデータベースまわりのインフラに輪をかけて、実際の現場を知らないと業務内容を想像しにくいだろう。ネットワーク機器に対しては、従来、ネットワークエンジニアによる個別の設定投入や障害切り分けといった作業が避けられなかった。しかし近年では、メーカーや機種ごとに異なる設定手順を抽象化してプログラミングを容易にする仕組みが登場したり、サーバー構成管理の技術が応用されたりして、こうした作業の自動化の試みも広がっている。
本稿では、こうした「ネットワーク自動化」と呼ばれる領域について、背景や代表的な技術、ユースケースなどを紹介する。
#2 ゲームエンジンでGPUをどう扱うか ― Ebitenの設計から学ぶ(星一)
高速な画面描画が求められる処理では、GPUを利用するために、一般にOpenGLのようなグラフィックスライブラリを利用する。ただし、そうしたライブラリで提供されている操作は「GPUで効率的に3Dを描画する」ことが意図されたものであり、たとえば「2D画像を高速に何度も切り替える」といった操作を記述しやすいものではない。このミスマッチは、ユーザーが記述する操作の多くが「矩形画像から矩形画像への変換」であるような2Dゲームエンジンにおいては、そのAPI設計の課題として顕在化する。
本稿では、OpenGLにおけるレンダリング処理のモデルを2D画像の描画に焦点を絞って説明したうえで、Goで実装された2DゲームエンジンEbitenの実装を例に、このミスマッチを表面化させずにGPUの恩恵をユーザーに提供するための設計上の工夫を解説している。
#3 情報幾何からの眺め(平岡和幸・堀玄)
統計解析や機械学習では、データを確率的な値とみなし、確率論にもとづく手法で分類や予測を行う。このとき、いわゆる確率分布を「ある空間上の1つのベクトル」とみなせば、複雑な状況でも「絵」を使って考えられるようになるかもしれない。この素朴な発想に数学的な基礎を与えてくれる理論として、データサイエンスに携わるエンジニアなどの間でも「情報幾何」が注目されている。
情報幾何そのものは、データの統計的な扱いに絵的な解釈を与えてくれる道具というだけでなく、統計学と幾何学を結ぶ大きな話題である。本稿では、多様体や微分幾何といった数学科で主に学ぶ知識は前提とせずに、その入り口の見どころのいくつかを紹介している。
執筆者紹介
土屋太二(#1)
ネットワークエンジニア。ISP・SIer・CDNなどさまざまな立場でインターネットの設計・運用の仕事に携わる。副業で技術書執筆やYouTubeチャンネルでの情報発信も精力的に行う。面白いこと大好き。https://www.youtube.com/channel/UCpO3RcIrPaDJJ0Q3cbZrvZA
星一(#2)
ソフトウェアエンジニア。仕事ではC++を、趣味ではGoを書いている。子供の頃からゲームを作りたかったが、そのためのゲームエンジンの開発が終わらなくなってしまった。
平岡和幸(#3)
和歌山工業高等専門学校で数学を担当。専門は数理工学。博士(工学)。
堀玄(#3)
亜細亜大学経営学部でデータサイエンス関係科目を担当。専門は数理工学。博士 (工学)。
二人の共著として『プログラミングのための線形代数』『プログラミングのための確率統計』(オーム社)がある。